かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

 でも違ったのかな。あれは冗談ではなく、山浦さんの本音だと思ってもいいかな?

 これから先、少しでも山浦さんの役に立てる存在になれたら……。そう願わずにはいられなかった。



「片づけも戸締りもしたし、やり忘れたことないよね」

 終業時間を過ぎ、秘書室の中を歩いて確認する。

 誠司君は夕方から会議に出席していて、まだ終わっていない。その間、山浦さんは大事な会食場所の料亭と打ち合わせし、その帰りに手土産を手配するため、百貨店に寄ってそのまま直帰すると言っていた。

 もう一度確認して秘書室を出ると、ちょうどこちらに向かって野沢君がやって来た。

 この一週間、野沢君と何度か社内ですれ違ったことはあるけれど、仕事終わりに鉢合わせることはなかった。

 この前の告白が頭をよぎり、ちょっぴり緊張してしまう。

「お疲れ、荻原。上がり?」

「お疲れ様。うん、帰るところ。……野沢君も?」

「あぁ、残業したくてもできないからな。強制的に帰された」

 いつも通り、いつも通り……と自分に言い聞かせて肩を並べた。