かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

 だけどすぐに横断歩道の信号が赤に変わり足を止めると、ビルの窓ガラスに映る自分の髪を見て絶句する。駅まで走ったせいでボサボサになっていた。

 急いで手で整えながら、自然とため息が零れる。

 仕事を終わらせることができてよかったけど、今日は朝からついていない。指輪は忘れるし、朝食は食べられなかったし……。あれ? もしかして今朝も将生が朝食用意してくれていたのかな?

 慌てていて、キッチンのほうを見る余裕がなかった。

 でも昨日は用意されていなかったし、今朝も用意していないよね。帰りが遅かったもの。もし作ってくれていたら、夕食に食べよう。

 信号が青に変わり、足早に会社へと向かった。



 秘書室に入ると山浦さんはすでに出勤していて、いつものように朝の仕事に取りかかっていた。

 来月からは、私がすべて引き継ぐ予定となっていて、今は通常の時間に出勤し、できる範囲で手伝っている。

「おはようございます、他に終わっていないものはありますか?」

「すみません、ではお茶菓子のチェックをお願いしてもいいですか? 本日いらっしゃる取引先の方が甘党なので、チョコレートがあるか確認してください」

「わかりました」

 言われた通り給湯室で、お菓子のストックがある戸棚を確認すると、しっかり高級チョコレートがあった。