かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

 そういえば私、アプリの会社だとは聞いているけれど、将生がどんな仕事をしているのかあまり詳しくは知らない。それに彼の会社がどこにあるのか、なんとなくしかわからないし……。

 幼い頃からずっと一緒にいるのに、知らないことがある。もしかしたら他にも、もっとあるのかもしれない。

 そう思うとなぜか胸が切なくなるのは、なぜだろう。

 コポコポとコーヒーの香りが漂いはじめ、小さく息を漏らす。

 今はこんなことで悩んでいる場合じゃない。明日までに終わらせることだけに集中しないと。

 苦いコーヒーを飲みながら再開させた。




「んっ……」

 重い瞼を開けると、部屋中に太陽の日差しがたっぷり差し込んでいた。

「あれ……? 朝?」

 ゆっくりと起き上がり、眠気が覚めるとすぐさまベッドから飛び降りる。

「仕事っ……!」

 リビングへ行き、昨夜のままのテーブルを見ると、そこには翻訳が終わった書類があった。

「そうだった、終わってから寝落ちしちゃったんだ」

 深夜の二時までかかり、どうにか終わってそのまま力尽きた。ん? だったらどうしてベッドで寝ていたんだろう。だけどその答えはすぐに出る。

「将生、だよね」

 帰ってきたら私がリビングで寝ていたから、ベッドまで運んでくれたんだ。そしてやっぱり今朝も早く出たようで、すでに彼がいる気配がない。

「あ、時間っ……! お風呂も入ってない!」