かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

 一日中ほどんと秘書室にこもって仕事をしているから、他の秘書課の社員と滅多に顔を合わせる機会がない。

 だから山浦さんが心配するようなことはない。でもつまり仕事中に私が関わる人は、山浦さんしかいないということ。

 それはそれで少し寂しい気もするけれど、会社には遊びに来ているわけではない。秘書課に配属された以上、これが普通だと思うし。

「そうですか。しかし今後、なにかございましたらすぐにご報告ください」

「わかりました」

 それから今日やるべき仕事の指示を出して、山浦さんは誠司君とともに外出した。

 いよいよ本格的に海外進出へ着工しはじめたようで、現地の建築会社から送られてきた大量の契約書や資料などを、翻訳するのが私の仕事。

「これ、一週間で終わるかな」

 渡された量の多さに顔が引きつる。

 話すのは得意だけど、翻訳となると話は違う。英語のようにスラスラ読めるわけではない。

 山浦さんは一週間以上かかっても大丈夫だと言っていたけれど、できるなら言われた期限内にしっかり終わらせたい。