かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

「おはよう、田澤。俺と荻原、路線が同じなんだ。今日もたまたま同じ時間の電車に乗ってて、ついさっき会ったんだよな」

「あ……うん、そうなの」

 挙動不審になる私とは違い、野沢君は至って普通に説明してくれたおかげで、敬子も「そうだったんだ」と納得してくれた様子。

 自然な流れで敬子を間に挟み、会社に向かうものの……非常に気まずい。いや、〝気まずい〟というより〝後ろめたい〟が正解かも。

 仕方ないと頭では理解していても、心では割り切れない。だって私は敬子が野沢君のことを好きなことを知っていて、応援するとまで言ったのに……。

 複雑な気持ちで埋め尽くされ、たまらず声を上げた。

「ごめん、連休前に上司から頼まれていた仕事を忘れてて……。悪いけど、先に行くね」

 一方的に言うと、ふたりからは戸惑った反応が返ってきた。

「え、小毬?」

「そんなに急いで行かないといけない仕事なのか?」

「うん、秘書の仕事って始業前にやらなくちゃいけないことがたくさんあって。ふたりはゆっくり来て。……また今度ね」

 そう言って駆け足で会社へと急ぐ。