かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

 人を好きになったことがない私には、想像してもわからないけれどつらいことじゃないのかな。いや、でもそこまでまだ私のことを好きじゃなかったからかもしれないし……。どうするのが正解なんだろう。

 グルグルと思いを巡らせていると、頭をコツンとされた。

「考えすぎ。俺がそうしたいって言ってるんだから、荻原が深く考える必要なんてないんだよ」

「でも……」

 本当にそれでいいの? 答えがわからなくてジッと野沢君を見つめる。

「むしろそうしてくれないと俺がつらいから。……わかった?」

「……うん、わかった」

 野沢君が言うなら、それでいいんだよね。私はこれからも今まで通り彼と接しよう。

 そう心に決めて、到着した電車に乗った。



 改札口を抜けて野沢君と会社に向かっていると、背後から声をかけられた。

「あれ、珍しいね。ふたりが一緒なんて」

 聞き覚えのある声に、ギクリと身体が反応してしまう。

 野沢君とともに足を止めて振り返ると、そこにいたのはやはり敬子だった。不思議そうに私たちを見ている。