かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

 小毬といい感じだったところを、一度ならず二度までも邪魔するとは……! これでくだらない電話だったらキレるぞ。

 苛立ちを抑えながら電話に出ると、抑揚のない声が届いた。

『将生、俺はもう生きていけないかもしれない』

「は? いきなりなにを言って……っ!?」

 どうやらくだらない話どころの問題ではなさそうだ。生きていけないかもだなんて、洋太にいったいなにがあったのだろうか。

 近くに小毬がいることを思い出し、玄関付近へと移動した。

「なにがあったんだよ」

 そもそも昔から前向きで明るかった洋太が、マイナスなことを言うのは非常に珍しい。それほど深刻な事態に陥っている?

 心配で尋ねると、洋太は力ない声で言った。

『浩美さんが理由も言わずに、別れようって言ってきたんだ。……来月いっぱいで会社も辞めるって』

「嘘だろ?」

 思いもよらぬ話に驚きを隠せない。

 ふたりはうまくいっていたし、正直、近い将来結婚すると思っていた。それに沢渡さんは、いつも生き生きと仕事をしていたし、なにかに困っているとか、悩んでいる様子も見られなかった。

『こんな嘘つくわけないだろ? 将生が小毬ちゃんと旅行に行っているとわかっても、連絡せずにはいれらないほど落ち込んでいるんだから』

「そう、だよな」