かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

「小毬、こっち来て」

「え、将生?」

 立ち上がって縁側へ向かい、窓を全開にした。

「どうしたの? 急に」

「ん、ちょっとな」

 もう一度時計を見ると、あと一分に迫っていた。

「座って見よう」

「見るってなにを?」

 混乱する小毬の手を引いて縁側に並んで腰を下ろすと、音を立てて一発の大きな花火が夜空に打ち上がった。

「え……嘘、花火?」

 突然打ち上がった花火にびっくりしながらも、次々と上がっては消えていく夜空に咲く花火に小毬は言葉を失う。

 そして、百発の花火がすべて打ち上がると歓声を上げた。

「すごい、綺麗だったね! どこかでお祭りでもあったのかな? あれ? でもまだお祭りの時期じゃないよね?」

 小首を傾げる小毬に、クスリと笑ってしまった。

「よかっただろ? 偶然にも見られて」

「うん、それはもちろん!」

 彼女が満面の笑みで答えた時、食べ終えた食器を下げに女将が入ってきた。

「失礼いたします。こちら、お下げしますね」

「お願いします」

 素早く音を立てずに片づけをしながら、女将は「先ほどはありがとうございました」と言ってきた。

「村瀬様のおかげで私たち従業員や、他のお客様も花火を楽しむことができました」

「いや、それはっ……!」

 咄嗟に否定しようとしたが、事情を知らない小毬がすぐに女将に尋ねた。