かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

「ではお食事のお時間まで、ごゆっくりお過ごしください」

 丁寧に頭を下げると、女将は部屋を出ていった。そしてなんとも言えぬ気まずい空気になる。

 周囲を気にせずにゆっくり過ごしたかったし、なによりここは両親たちと訪れたことがある場所。

 露天風呂のことは深く考えずに決めたけど、もっと配慮するべきだった。

「小毬、本館の風呂に行かない? 部屋の風呂は明日の朝、俺が寝ている時に入るといい」

「……うん」

 さっきまであんなに明るかったのに、警戒しているのかよそよそしい。風呂に入って少しは空気が変わればいいが……。

 俺の願いが通じたのか、風呂から出ると小毬は「すごくいいお風呂だった」と話してくれた。

 夕食までの間は女将に庭先に足湯があることを聞き、ふたりで入りに行った。

 緑が生い茂る中、今日の疲れを取るように足湯に浸かり、鎌倉散策の話で盛り上がる。それは夕食の時もだった。

 料理が運ばれてくるたびに小毬は歓声を上げ、噛みしめながら食べる。その姿を見ることができて幸せな気持ちになった。

 洋太や沢渡さんに注意されながらも、仕事の合間を縫って計画を立てて本当によかった。

「鎌倉でたくさん食べたのに、夕食どれもおいしくてお腹いっぱい」

 そう言いながら苦しそうにお腹を擦る小毬を見ながら、さっきから気になってしまうのは時間。

 そろそろだよな?