かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

「旅行、明後日からだから」

 すぐに表情を引き締めたものの、小毬に「じゃあ明日準備しないとね」と笑いながら言われてしまった。

 だけどよかった、断られなくて。明後日からの旅行で、少しでも小毬との距離を縮めよう。

 不安と期待を入り混じらせながら迎えた旅行当日。連休中ということもあり、時間に余裕をもって家を出た。

 そして小毬とゆっくり話ができればと思い、俺の運転で向かっている。

「あ、ねぇ、将生。行き先はどこ?」

「それは着くまで秘密」

「そっか……」

 サプライズにしたい思いが強すぎて、さっきから会話が続かない。

「あ……仕事はどうだ? 慣れてきたか?」

「うん、覚えることがたくさんで大変だけど、どうにか。誠司君もなにかと気にかけてくれるし助かっているよ」

「……そうか」

 なんて言いながら、複雑な気持ちになる。兄さんが小毬のことを気遣ってくれていることに感謝している。

 だが会社でのふたりを俺は知らない。どんな風に関わって、いつもなにを話しているのだろうか。

「将生……?」

「あ、なんでもない。もう少しで着くから」

 名前を呼ばれ、頭の中から兄さんのことを追い払った。

 今さらそんなことを気にしたって仕方ないし、なにより念願の小毬とふたりっきりの旅行だ。

 気持ちを切り替えて、安全運転で目的地へと向かった。