かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

「村瀬が小毬のことを本気だってことは、昔から知ってたよ。ちなみに小毬以外にはバレバレだったと思う。だからあんたの気持ちを利用して交際を迫る女が後を絶たなかったのよ」

「そう、だったのか……」

 初めて知る事実にショックを隠し切れない。

「村瀬が婚約者の小毬に冷たく接していたおかげで、親に無理やり決められたからだって言われ、小毬は責められていたのよ? 小毬じゃ不釣り合いだ、村瀬が可哀想だって」

「そんなことを言われていたのか?」

「うん」

 ずっと小毬を傷つけたくないと願いながら、自分のせいで小毬につらい思いをさせていたとは……。

 過去を後悔したって戻れないと割り切れない。

 なにも言えずにいると、吉井は前屈みになり俺の顔を覗き込んできた。

「でも今は、どんなことがあっても小毬を守るんでしょ?」

「……あぁ」

 吉井から話を聞いて、その思いは強くなった。

 俺の答えを聞くと吉井は表情を緩めた。

「だったら過去のあんたを許す。……悔しいけど、今の小毬は幸せそうだから」

「えっ?」

 すると吉井はおもしろくなさそうに言う。