かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

 昔の可愛かった小毬を思い出すと、笑いそうになる。

 一ヵ月だけ先に生まれた小毬は、お姉ちゃんだと言い張って、なにをするにも俺を守り、気にかけていた。

 身体も俺より成長が早く、昔は小毬のほうが大きかったから余計かもしれない。

「俺はもう五歳の頃から小毬のことが好きだったよ。……その気持ちは次第に大きくなって、婚約者だと知った後はますます好きになった」

 小毬は大きくなるにつれて可愛さを増し、独占欲が芽生えていった。他の子と仲良くしてほしくなくて、学校では常に一緒にいた。

「でも俺のせいで、小毬が友達から嫌がらせされているのを知った。次第にクラスでもひとりでいることが増え、あんなに明るかった小毬が笑わなくなった。……俺たちは大学まで上がれる学校に通っていたから、当然進学しても環境はさほど変わらない。だから中学からは公立の学校に進学したんだ」

 そこで小毬は、吉井と出会った。

「吉井には感謝してるよ。……小毬がまた笑うようになって、クラスメイトとも打ち解けることができたのは、吉井のおかげだから。本当にありがとう」

 改めて感謝の思いを伝えると、吉井は戸惑った。

「なによ、村瀬が私に感謝するとか気持ち悪い。……あんた、私のこと嫌いでしょ?」

「あぁ。でもそれはお互い様だろ?」