かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

 まさかそんなことを聞かれるとは思わず、つい不快感を露わにしてしまうと、吉井は片眉を上げた。

「気になって当然でしょ? 村瀬が心から小毬を愛していないなら、親友として安心できないもの。答えられないってことは、婚約者だから無理に好きになったってこと?」

「ちがっ……! そんなわけないだろ?」

「だったら教えてよ」

 間髪入れず言う吉井。そしてジッと俺の答えを待つ姿を見て、諦めにも似たため息を漏らした。
 これは話さないことには、納得してくれなそうだ。

 こんなこと小毬にも話したことがないし、恥ずかしい以外のなにものでもない。

 だけど吉井に俺がどれほど小毬を大切に想っているのかわかってほしくて、恥を忍んで話した。

「小毬は無条件で俺を受け入れてくれたからだ」

「えっ?」

 吉井はどういう意味がわからないと言うように首を傾げる。

「小毬から聞いていないか? 俺には六つ上の兄がいることを」

「それは知っているけど……」

 兄さんとの思い出には、苦い思いしかない。

「兄さんは子供の頃から優秀だった。勉強もスポーツもできて、優しくて誰からも好かれていた。……だから俺は物心つく頃からなにかと比べられてきたんだ」