かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

「小毬に私が頼んだの。村瀬と話がしたいから、ふたりっきりにさせてほしいって。……その顔だと気づいた?」

「あぁ、小毬の様子がおかしかったからな」

「小毬は素直だからね」

 そう言ってクスリと笑ったものだから、目が釘づけになる。遠くから吉井が笑ったところは何度も見てきたが、こうして俺の目の前で笑ったところは初めて見るかもしれない。

 ついまじまじと眺めていると、吉井は眉間に皺を刻んだ。

「なによ、その顔は。私が笑うのがそんなに珍しい?」

「いや、そういうわけでは……」

 言葉を濁すと、吉井は咳払いをした。

「こんな話をするために小毬に頼んだわけじゃないの。……一度、村瀬とはゆっくり話がしたかったから」

 すると吉井は「座って話そう」と言い、ダイニングテーブルに移動して腰を下ろすと、真向か
いの席に座るよう手で促した。

 そうだな、吉井とは小毬抜きで一度ゆっくり話をしたほうがいいのかもしれない。

 椅子に腰を下ろすと、吉井はさっそく切り出した。

「村瀬の今の気持ちはわかった。……だから聞きたいんだけどさ、どうして小毬を好きになったの? 婚約者だから?」

「は?」