かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

 洗い終わった食器を拭いて片づけ、デザートの準備に取りかかる。俺と小毬は食後に飲むのはいつもコーヒーだが、吉井も同じで大丈夫だろうか。
 気になって声をかけた。

「吉井、コーヒーでもいいか?」

「うーん……できれば紅茶がいいんだけど」

 紅茶、あったかな。

 戸棚の中を探すより先に、小毬が声を上げた。

「将生、私買ってくるよ!」

「えっ?」

 買ってくるって……ちょっと待て、小毬ひとりで行くわけじゃないよな? 吉井も一緒だよな?

「すぐ買ってくるから、待ってて」

 そう言うと小毬は貴重品をまとめ、まるで逃げるように出ていった。

「あ、小毬……!」

 追いかけようとしたが、すぐに玄関のドアが閉まる音が聞こえてきて諦めた。

 冗談だろ、吉井とふたりっきりにするなんて。いや、もしかしてわざとか?

 そんな考えが頭をよぎった時、リビングから吉井が「村瀬、ちょっと」と俺を呼ぶ。

 疑惑を拭えぬままリビングへ行くと、ソファに座っていた吉井は立ち上がった。