かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

 変わらず俺に鋭い目を向ける吉井は、小毬のことが大切だから俺に言ってくれたんだよな。

 手にしていたフォークを置き、真っ直ぐに吉井を見据えた。

「吉井の言う通りだと思う」

 素直に認めると意外だったのか、吉井は目を丸くさせた。

「昔の自分の振る舞いをずっと後悔しているよ。……だからこれからはなにがあっても、小毬を悲しませたり、つらい思いをさせたり、傷つけるようなことはしない。生涯かけて大切にするつもりだ」

 はっきりと自分の思いを伝えると、吉井は目を逸らした。

「さっき言ったこと、忘れないで。……小毬のこと、絶対守ってね」

「あぁ」

 そう言うと吉井は、料理をパクパクと口に運んでいく。

 少しは小毬を想う気持ちが吉井に伝わったと、自惚れてもいいのだろうか。

 すると小毬は俺の気持ちを察したのか、「伝わったよ」と言うように大きく頷いた。それを見てホッと胸を撫で下ろす。

 こうして少しずつ俺の気持ちを吉井にも伝えていこう。

 吉井は俺が作った料理を残さず全部食べてくれた。

 片づけを手伝うと言って引き下がらなかった小毬を宥め、ひとりで食器を洗っている間、ずっと小毬と吉井の笑い声が聞こえてくる。