かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

 だけど数十メートル走ったところで、指輪を外したままのことを思い出した。

「指輪っ……!」
 歩行者の通行の邪魔にならない端で足を止め、バッグの中にしまった指輪を探す。だけど暗くてなかなか見つけることができない。

「あった!」

 見つけた指輪を手に取った時――。

「荻原!」

 急に名前を呼ばれ、びっくりして手にした指輪を落としてしまった。

「野沢君……?」

 どうして野沢君がここに? あ、それよりも指輪……!

 落ちた指輪を探していると、野沢君の足元のすぐ近くに転がっていた。

「結婚指輪……?」

 拾い上げると、野沢君は困惑した顔で名前が彫られている指輪と私を見た。

「えっと……」

 どうしよう、言葉が続かない。いくらだって誤魔化す術はあるじゃない。

「これ、荻原のだよな?」

 この状況で違うとは言えない。頷くと、「そうか」と呟いたあと、そっと指輪を差し出した。

「大切なものなんだろ? 落とさないように気をつけないと」

 聞かないの? 結婚しているかどうかを。普通気になるものじゃないの? だって結婚指輪だって気づいたんだよね?