かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

 都内の高層マンションに次々と運ばれてくるふたり分の荷物。それを私ひとりで片づけていた。

 新居の家具や配置は私に一任させてもらった。それというのも、将生は大学在学中に起業し、一企業の経営者。若き青年実業家としてよくメディアにも取り上げられている。

 友人である秋田(あきた)洋太(ようた)とふたりではじめた会社も、今では三百名の社員を抱えるまでに成長を遂げた。

 そんな彼は常に多忙で、結婚式の前日もそして次の日も仕事。当然新婚旅行に行く暇もない。だけどそれは私にとって好都合だった。

 将生だって私なんかと旅行になんて行きたくないだろうし、こうして家のことを一任させてもらえるのも非常に助かる。

 2LDKの間取りで、将生は家でも仕事をするから書斎がほしいと言っていた。あとはすべて任せると。
 それをいいことにひとつは彼の書斎兼寝室。もうひとつは私の寝室にさせてもらった。

 荷物をすべて運び入れてもらい、引っ越し業者が帰ったあと、ひとりで片づけを進めていく。

 家具や食器類を選ぶの、楽しかったな。ずっと実家暮らしだったから、親元を離れて暮らすこれからの日々も、ちょっぴり楽しみだったりする。

 将生は仕事で忙しいだろうし、それに結婚しても私のことが嫌いな彼は外で誰かと関係を持ち、帰ってこない日のほうが多いかもしれない。