かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

「気配り上手で、話し上手ね。だけど決して口説いてこない誠実さに、友達みんな野沢君にメロメロよ」

 笑いながら言うと、由良は通りかかった店員にビールを注文した。

「だから私は断然野沢君推しなんだけど、小毬はあいつがいいんでしょ?」

「……うん」

 照れながらも頷くと、由良はがっくり項垂れた。

「やっぱりそうか。……でもあいつも少しは成長したのかな」

「えっ?」

 由良が頼んだビールが届き、それを受け取ってゴクゴクと喉を鳴らす。

「だって今日ここに来ること、あいつ許してくれたんでしょ?」

「うん、そうだけど……」

 すると由良は感慨深そうに言う。

「信じられないわ。昔のあいつだったら、なんとしてでも阻止していたよ。私にさえ敵意を向けてきたんだからね?」

「そ、そうなの?」

 信じがたい話に目を白黒させると、由良は嫌悪感を露わにした。

「私、いつも小毬と一緒にいたでしょ? それが悔しかったんだろうね。同性の私にも嫉妬するあいつが、男がたくさんいるこういう集まりに小毬を送り出すなんて、やっぱり信じられない」

 鼻息荒くして言うと、由良は近くにあったポテトに手を伸ばした。

「だけどまぁ……あいつも大人になったってことかな」