かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

 なんとなく近くにいると電話の邪魔をしちゃいそうで、空になったマグカップを手に持ち、キッチンへ向かった。

 コップを洗うものの、どうしても将生の声が耳に届いてしまう。

「いや、特に予定はないが……。は? そんな急な。……わかってるけど、俺の事情も知ってるだろ?」

 焦った声で話しているけど、どうしたんだろう。なにかトラブル?

「……わかったよ、ちゃんと参加する。あぁ、手配はお前に任せる」

 布巾で拭いて食器棚にしまい終えると、電話を終えた将生は浮かない顔をしている。

「なにかあったの?」

 心配になりリビングに戻って声をかけると、将生は首を横に振った。

「いや、トラブルとかじゃないんだ。……ただ、洋太が勝手に新入社員のための歓迎会に、俺も参加するって言ったようで」

「え、歓迎会なら出なくちゃいけないんじゃないの?」

 思ったことを口にすると、将生は困った顔を見せた。

「でも会社のトップが出席したら、せっかくの楽しい歓迎会が台無しにならないか? もちろん社員が増えるまでは参加していたが、今は規模も大きくなり、社員教育は部下に任せて俺は経営のみに集中しているから、ほとんど関わりがない。そんな俺が来たって場の空気を壊しかねない気がしてさ」