かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

「あまりそういう顔しないでくれ。……せっかく我慢していたのに、できなくなる」

「将生……」

 バクバクと心臓の音がうるさい。

「誠実でいたいのに、小毬は簡単に俺の理性を崩壊させる。……小毬が俺を好きになってくれるまで触れないと決めたのに……」

 自傷気味に笑う姿にさえドキドキしてしまう。

 将生だって私の心を大きくかき乱している。それをいったら昔からそうだったのかもしれない。

 彼の言動に傷ついたりときめいたりと、感情の起伏が激しかった。

 今だって好きかどうかもわからないのに、なぜか拒むことができなくて求めてしまう。こうして熱い眼差しで見つめられると、抗うことができなくなるんだ。

「小毬……」

 艶のある声で呼ばれると、胸をギュッと締めつけられる。ゆっくりと瞼を閉じようとした瞬間、将生のスマホが鳴った。

「将生、電話……」

「わかってる。……わかってるけど」

 鳴りっぱなしの呼び出し音。だけど将生は一向に電話を取る気配がなく、ただ熱く私を見つめるばかり。

 だけどいつまでも鳴り止まない着信音に、将生に大きな溜息を零し、私から離れて立ち上がった。

 そして私に背を向けて苛立った様子で電話に出た。

「もしもし。……あぁ、洋太か。どうかしたのか?」

 どうやら電話の相手は副社長である秋田さんのようだ。仕事の話かもしれない。