かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

「なんでだめなわけ? さっき小毬は俺の情けない顔を見ただろ? それなのに小毬は見せてくれないなんて、フェアじゃない」

 意地悪な声で言うと、無理やり私の顔を見ようとする。

「もう、将生?」

「いいから見せてよ」

 彼の手が頬に触れると、がっちりホールドされた。そのまま目線を上げれば愛しそうに私を見る将生と目が合う。

「なに恥ずかしがってるんだよ、小毬から言ってきたんだぞ?」

「そ、それはそうだけど……」

 だめだ、平常心!と思えば思うほど心が乱れていく。

 そんな私の心情を知ってか、さらに私の心を煽る。

「俺も小毬のおかげで仕事を頑張れているよ。働いているのに家のことをやってくれて感謝しているし、疲れて帰った時に小毬に『おかえり』って出迎えられると、一日の疲れも吹き飛ぶんだ。……だから今日も小毬の『おかえり』が聞きたくて、着替えもせず真っ先にキッチンに行ったんだ」

 そう、だったんだ。

 またひとつ将生の気持ちを知って、胸がときめく。

「不思議だよな、昔はこうやって素直な想いを伝えるのが苦手で天邪鬼だったのに、今はスラスラと気持ちを伝えることができる。……まぁ、それはこうやって堂々と触れるからかもしれないけど」

 優しく頬を撫でられ、思わず目を瞑ってしまう。再び目を開けると、将生は私を見つめたまま苦しげに顔を歪めた。