私は中間地点のような見晴らしの良い開けた場所で止まり、スマホで道を調べた。

しかし、画面に表示されたのは、緑色の中に小さく現在地を表す青い点だけ。
つまり、この画面からわかるのは、『あなたは今山の中にいます』という情報のみ。山の中の道なんて描かれていなかった。

『標山 ルート』と検索をかけても、出てくるのは簡易的な道の全体図。

今度はあたりを見回して看板を探したが、ない。あるのは裸になった木々と砂利、石段やコケのついた木製の手すりだけだ。

そこで、スマホに夢中になっていた私はようやく気が付いた。

人が誰もいないということに……。

「え……嘘でしょ?」

 確かに、よくわからない道のため引き返していく人もあり、少しずつ人数は減っていたが、まさか誰一人いなくなるなんて思ってもみなかった。

 葉の無い木々が風に煽られ、ザアッと不気味な音を立てる。一気に体が冷え、再びコートを羽織った。