人間ってどういうことだろう。見える人?神隠しにあった人?
いずれにしろ、小屋まであるくらいだから長い間ここにいることは確かだ。
「そうだ。こやつは河西敦史と言ってな、三十年ほど前に今の舞と同じく神隠しに合った人間だ」
「さ、三十年間もここに…?どうして?」
そう聞くと神様とおじさんは、まあまあ落ち着けと言わんばかりに、奥の座敷へと連れていってくれた。
少しじめっとしたカビ臭い部屋の真ん中に、小さな囲炉裏があった。
おじさんは私と神様、そして白狐たちに、沸かしたてのお茶を入れて渡す。
神様は熱いお茶を勢いよく飲み干し、ぷはぁと息を吐いた。
「いつもな、人間が来た時はここに連れてくるのだ。体験談を聞いた方が早い」
わけがわからず困った顔をしておじさんを見る。おじさんも苦笑いをして、話し始めた。



