向かいのお店もざわざわとしていて、私もその野次馬の一人になる。
よくよく見てみると、お店の中ではなく、店と店の間にしゃがみ込んでいた。神様たちの間を上手く通り抜け、視線の中心の近くまで来る。
「迷子になったのだな」
何か力が込められているような、優しすぎるその言葉に、心臓がドクンと脈を打つ。
神様がそうつぶやいた相手は、頭に小さな角を生やした、リンゴ三つ分ほどの黒い鬼のようなもの。
手には槍のようなものを持っており、小さく震えていた。
「そうか、苦労したな。本来ならばもう少し話を聞きたいが、ここにいると、お前の命が危ない。さあ……」
突然、強い風が吹き荒れた。穏やかな陽だまりのように暖かい風。
その流れは神様から小さな鬼に向かって吹いている。
流れに沿って、小鬼の背後に、風鈴のついた白い鳥居の階段が現れた。
小鬼のサイズに合わせた小さな鳥居の並びは下を向いており、階段の終わりは光が溢れていて見ることができない。
まるで、白いブラックホールのように吸い込まれそうだった。



