鳥居の道標



「か、かっこいいです」


思わず見とれてしまった。店主の狐や白狐たちも同じようにコンコン呟いている。


「そうか! さすがだな、えっと…舞!」


「え、どうして私の名前を…?」


「そりゃ、神様だからな! 狐!お会計!このまま着て帰る!」


店主は慌てて値段を計算し、タグを切っていた。白狐たちも神様に財布を手渡す。


嬉しそうにクルクルと回る神様。その様子を見て、なんだかこちらまで笑みがこぼれてしまう。


お会計が終わり、通りに出た。
元着ていた服は今日買った別の紙袋に突っ込む。


「シンプルイズベストって本当なんだな! 柄が沢山ある方がかっこいいと思っていた!」


「柄物も悪くは無いですけど、あの服はちょっと……ですね」


それを聞き、神様は声を上げて笑った。新しくてかっこいい服に出会えて、とても幸せそう。


流行りとかをもっと知っていたら、他にもかっこいい服を教えてあげられたのかな。


まあ、あのお店だとこれが限界だと思うけれど。


 そう思っていると、神様の笑い声がピタリと止んだ。不思議に思って見上げると、神様は真剣な表情で、斜め向かいのお店を見ている。


「どうしたんですか? そんなに良いものがありました?」


「ちょっと待ってろ」


 相変わらず話がかみ合わない。でも白狐と一緒に急ぐ姿を見て、何か異変が起きたことを察知した。