鳥居の道標



「おーい! 人間のお嬢さん! ちょっと来てー!」

 遠くから神様の声が聞こえた。ついでに呼び鈴を鳴らすように、耳元のイヤリングをリンリンと響かせている。


「あーはい! 今行きます!」


 人波、いや神波を掻き分けて、私は神様の元へ向かった。


 その店は閉店セール中の服屋のように、ワゴンに大量の服がグシャリと山積みになっている店だった。


 ただし、閉店セール中でもなければ、私たち以外誰もいない。目を吊り上げた黄色い狐が一匹、定位置であろう高めの椅子に座っていた。


「コココ、コココンコ!」


 店主が神様に何か話している。でも狐語なのか、何を言っているか全くわからない。


「おお、そうであろう! だがな、この娘がこの服を悪く言うんだ。だから、人間の最先端の服装を教えてもらおうと思ってな」


「コココン⁉ ココン、コンコンコココン!」


 今度は私に向かって何かを言っている。けれど、さっぱりその言語は理解できない。白狐たちとは普通に話せるのに。


「お前、どこが悪いか言ってみろ。だってさ」


 神様が笑いながら訳してくれた。多分、この変わったTシャツは、ここで売られていたのだろう。