するとふくらはぎに、暖かくてふわふわしたものが触れた。
見下ろすと、白狐の一匹の尻尾が触れており、何か話した気な表情で私を見ている。もう一匹は、神様について行ったらしい。
「ワシが代わりに説明してやろう。あの方は一度何かに集中すると、周りが見えなくなるからな。あれでも話を聞いている方じゃ」
だったら、いつもはどれほどひどいのだろう。そんなことを想像すると、白狐たちが呆れるのも無理はないと思った。
「良いか、よく聞くのじゃぞ。ここは夢でも異世界でもないし、お主が変な物を見えるようになったわけでもない。同じ世界じゃ」
「同じ世界? じゃあ、現実ってこと? それにしても、私が考えてることよくわかったね」
狐はフンッと鼻を鳴らし「だてに何千年間、人間の世話係やってないわい」と誇らしげに言った。
「難しいかもしれんが、元々この世界は、お主のよく知る世界ともう一つ同じ世界が少し重なり合ってできているのじゃ」
言っていることがよくわからなくて、ポカンとしている私を見て、狐は赤い紙と白い紙を取り出した。
「赤い紙がお主の世界。白い紙がここ、あやかしの世界じゃ。人間たちは知らないと思うが、実はこの世界は半分だけ重なっている。
ワシらは皆、お主ら人間のことが見えるが、人間はそうじゃない。
この重なった部分があろう? そこに属すのが、いわゆる霊感の持ち主じゃ。
そやつらは、お主の世界におってもワシらのことが見えるが、重なっとらん赤い部分に属す人間には見えん。それが大半なのじゃがな。
ちなみにここで人の姿をしとる客は皆神様じゃ」
赤い紙の上に半分だけ白い紙が重なり、真ん中がピンク色に見える。
つまり、このあやかしの世界から見れば、私たちは丸見えだけど、こちらは一部の人にしか見えないと。
「なるほど。じゃあ私は見える体質になったってことね」
「ああもう、違う違う。お主は真っ赤な部分に属す、生粋の見えない人間じゃ」
「ええ、じゃあどういうこと?」
生粋の見えない人間って、何その皮肉っぽい言い方。だったら他に、私がここにいる理由だとか、見える理由とかがあるのだろうか。
「お主は今、神隠しに合っているんじゃよ」
「か、神隠し?」



