その音は狐たちにも聞こえたようで、耳をピクリとさせ、口を閉ざした。騒がしかった空間は、まるで追っ手から身を隠すように、静まり返る。

 チリン、チリンと次第に音は近づいてくる。強く、激しく、透き通って―――。

「たっだいまー!」

バーンと扉に体当たりするようにして入ってきたのは、陽気な声を弾かせた人だった。

その人が入ってくるなり、薄暗かったこの空間に、光が駆け抜ける。いきなり明るくなったせいで目がくらみ、思わず瞼を閉じた。

 数秒経って光が落ち着き、ゆっくりと光を取り入れると、辺りは日がさしている。

顔を上げると、意識が途切れる前に見た白い鳥居と、その手前に、いくつもの紙袋を腕にかけた大学生くらいの男の人がいた。

「見よ、右狐、左狐(さこん)! 今日も掘り出し物ばかりだ!」

 狐たちがひょこひょこと男のもとへ走る。

 その人は、染めたのか天然なのかわからないけれど、鳥居と同じ白い髪が特徴で、耳には風鈴のような大きなイヤリングが付いていた。