えっ、何にも聞いてないんですけど。

「言ってなかったですか?」

首を傾げて聞き返してきた星川くんに、
「何にも言ってないです…。

と言うか、何にも聞いてないんですけど…」

私は言い返した。

「と、と言うか…星川くん、青空ちゃんから“とーたん”って…」

続けて質問した私の、
「とーたん?

それはあだ名ですよ」

星川くんが答えた。

「あ、あだ名?

“父さん”とか“父ちゃん”って言う意味じゃなくて?」

てっきり、そうだと推理したんですけど…。

「“冬哉さん”って上手に言えなかったから“とーたん”になっちゃったんだ。

まあ、まだ小さいから当然のことなんだけど」

星川くんはやれやれと息を吐いた。