ある日、親友が死んだ。

猟奇殺人事件の被害者として。

殺されたんだ。

彼にとっては顔も知らない奴に。

今日は親友の葬式だ。

あいつの顔を見れるのも今日が最後。

最も、顔は見れても生きてないけどな。









なんで死んだんだ?

いや、本人の意思では無いことは解ってる。

でもそう思うのも仕方ないだろ。

いきなりだったし。

言いたいこともまだ言えてないのに。

ずっと悩んでたんだ。

言いたくて。

誰にも言えなくて。

お前になら言ってもいいんじゃないか。

やっとそう思えてきた。

その矢先に。

お前は死んだ。

あの日言うつもりだったのに。

お前以外に言える奴にこれから先も会わないだろう。

お前だけだったのに。

言えたのは。

それなのに死んでしまった。

何でこうなったんだろうな。

こんなつもりじゃなかったのに。

言いたいことなんて

今更言っても、もう遅い。

解ってるけど

言わせてくれ。




「なぁ。言わせてくれるか?」




一人で空を仰いで呟く。

そこに居るであろう青い空に向かって。




「ずっと言えなかった俺の話を」












「俺、








二重人格者なんだ。









そんなのさっさと言えば良かったか?


でも言えなかったんだ。


どうしても。


俺の中にもう1人別の自分が居る。


何時からかは解らねえ。


気付けば居たんだ。


そこに。


でもお前は会った(...)ことないよ。


他の人もだ。


ずっと隠してたからな。


だって、


会わせられねえよ。


あいつは、


あいつ、は、   」





言ってて、肩が震えてきた。

やばいな。

泣きそうだ。

お前がまだ居たら、

涙なんか無くても言えただろうにな。




「………ぅ…………っ……………」




ここまで来たら

最後まで言うよ。


あぁ

きっと俺

今、酷い顔してるんだろうな。





「………あいつは、な?


だめだ。


だめなんだ。


絶対にだめなんだ。


外に出してはだめなんだ。


そういう奴なんだ。


そんな奴に会わせれないだろ?


だってよ




あいつは、





あいつはぁ、







あれ(..)は、もう










人じゃねえ。











殺人欲求












そのものだ。






ただの





殺人願望の塊だ。





ただただ、 殺したいって




気持ちだけ。




自我なんて無い。




あいつを外に出したら




目の前の人を殺す。




そんな未来



考えずとも見えてたよ。




だから



外に出してなかったんだ。



なのに




何でだろうな。



何でこうなったんだろうな。



こうなる筈じゃなかったのにな  」








最後まで

言う。

言うって決めた。

最後まで

言うんだ。

聞いているのは犠牲になったあいつぐらいだ。

もしかしたら聞いてないかもしれない。

だから


最後まで


言え。


俺。








「あの日の言い訳も


聞いてくれ。


あの日本当はこの事を言うつもりだった


ああなったのは


事情があるんだ。


あの日、言うつもりでお前に会いに行った。


だけど、やっぱり


迷ってな。




迷った挙句





言おうって決めた。






でもその直後に………







多分、迷うことに意識を向けすぎたんどろうな。





ぐらぐら揺れてるうちに






普段、押さえ込んでいたあいつが







出て来ちまったんだ。






俺はだめだと思った。




だけど引っ込めようと努力もした。




言い訳なんて要らないだろうな。




でも言わせてくれ。




努力した、けど、頑張ったけど、




無理だったんだ。






もう、




遅かった。




俺の想像どうりに





あいつは、












お前を殺してしまった。











っ……ぁあ……………っぁ………………ぅっ





 ごめん、な。



ごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめん…………………」









もう言い切った。


言い切ったよ。


やっと言えた。


でも言った所でお前はもう居ない。


言っても辛いだけだと


解ってた。


それでも言わなくちゃいけないだろう?


親友だから。


こんな事


黙っていていい訳ない。


だから


全部言った。


もう言うことなんてない。


もっと一緒にいたかったけどな。


全部包み隠さず


空っぽになるほど、言ったよ。


もう


お別れか。


俺もいつか行くそこで


待ってろよ。


今は俺のメモリの中すっからかんだからな。


次、会う時までお前に言うこと


増やしとくからな。








「まぁ


言えないことは


無くならないけどな。


どうしても。


いつか言える日が来ればいいけど。


「いつか」なんて


来るわけないし。


来なくて、いいよ。


これは言わなくていい言葉


言えない言葉、だから、な  」




















    『許してくれ』 なんて