溺愛なんてされるものじゃありません

次の日の夜、仕事から帰った私はいつものように髪を一つに結びほぼスッピンの状態で自分の部屋でダラダラと過ごしていた。

…ピンポーン

呼び鈴が鳴り、こんな時間に誰?と思いながらも取り敢えず玄関のドアを開ける。

「しゅ、主任?どうしたんです?」

ドアを開けた先にいたのは私服の平国主任だった。

「いや、ご飯の準備が出来たから呼びに来た。」

ご飯って、流石に連日ご飯をご馳走になっているから、今日は遠慮しておこうと思って主任の部屋に行かなかったんだけど…わざわざ呼びに来てくれたんだ。

でもご飯作ってくれたのならせっかくだし食べに行こうかな。

「すぐ行きます。」

私はそのまま主任の部屋に行った。玄関を開けるとビーフシチューの良い匂いがする。

そしてビーフシチューを食べていると、主任が話を始めた。

「昨日の溺愛についてだけど…。」

「へ?溺愛?」

「赤崎が言っただろう?女性は溺愛小説が好きだって。」

言ったかな?…言ったような気もする。

「あーはいはい。」

「…言った事忘れてたな。それでその溺愛について勉強してみたんだ。」

私は思わず咳き込んだ。主任、面白すぎる。溺愛の勉強って何したんだろう。

「べ、勉強って何をしたんですか?」

「今は携帯サイトで簡単に小説が読めるんだな。仕事の休憩中に恋愛小説を読みまくった。」

コーヒーを優雅に飲みながら携帯を見つめる主任の姿がポワーンと頭に浮かび上がる。女子社員がうっとりする場面だけど、溺愛の勉強の為に恋愛小説を読んでいるとは誰も思わないだろう。