溺愛なんてされるものじゃありません

「でも、ちゃんと相手の事を考える赤崎は偉いよな。」

主任はテーブル越しに私の頭をポンっとした。その拍子に何故だか分からないけど、私の目からは涙が流れ始める。

「えっ?何で涙が…。」

自分でも訳が分からず驚きながら手の甲で涙を拭う。

すると主任は立ち上がり、私の隣に来た。そして私をふわっと抱きしめる。

「よく分からないけど、泣きたい時は泣いた方がいいと思う。泣き顔は見ないようにするから…とりあえず泣いとけ。」

抱きしめながら私の耳元で囁くように言った。私は言葉に甘え、しばらく主任の胸を借りた。

抱きしめられてどの位の時間が経っただろう。私の涙は止まったけど、主任から離れるタイミングが分からない。

どうしよう。冷静になると、なんかめっちゃ恥ずかしい。主任、今どんな顔しているのかな。私は顔を赤くさせながら主任の胸に顔を(うず)める。

「あ、赤崎…そろそろ落ち着いたか?」

主任が声をかけてきて、私は慌てて主任からパッと離れた。

「ご、ごめんなさい。私…。」

「い、いや全然いいんだ。むしろ勝手に抱きしめてしまって悪かった。」

そう言いながら2人ともお互いから視線を逸らし少し沈黙する。恥ずかしくてあまり顔は見れなかったけど、主任も顔が赤くなっていた気がした。

「今日は本当にごめんなさい。私帰りますね。おやすみなさい。」

私はパッと立ち上がりペコっと頭を下げて、逃げるように自分の部屋に戻った。

自分の部屋に戻った私は、靴も脱がずに玄関のドアにもたれかかる。

私、何を思った?

涙の理由…

高成さんは会社での私に好意を持ってくれた。本当の私は知らない。こんな私を高成さんに知られるのが怖い?

…なんか違う。

もしかして、主任が私と高成さんが上手くいけばいいと思っているから?

いやいや違う…違うと思いたい。

もう何で私の頭の中にこんなに主任が出てくるんだろう。私は自分自身に若干キレ気味になった。