「・・・・・・もういっぺん言ってよ」

「・・・なにが」

「ドアホって。思いっきり」

「言わねぇよ・・・バーカ」

素っ気なく返ってシフトを入れ替える音。・・・車が少し乱暴に滑り出す。
ウィンドゥガラスの外を流れてく闇。咲く光。見つめながら。

「榊・・・ありがと。間違えないようにもっとしっかり考える」

返事を待たずに。

「いつも助けられてばっかりだね。・・・あたしさ、つくづくあんたがいないと生きてけないわ」

なんだろうもう。
自分の心臓の一部ってくらい。失くなったら壊死するくらい。

だから。
死に急がないでよ。

ココロでめいっぱい叫んだ。榊に届くように。


「・・・・・・そうかよ」

呟くように言ったその声が。微かに震えてたのなんて。
あんたが泣くのを堪えながら、シアワセそうな顔でいたなんて。

知らなかったよ。


なんだか今日のあんたは、素直に感情をぶつけてくれたなぁって。怒られたのに、のん気にうれしがってたあたしは。なにも知らない。榊がどんな気持ちでいたかなんて、・・・少しも。