『オマエが犠牲になんなくたって、オレは生きてけるよ』

『オマエが背負う気でいるオレの人生ってなに?』

『そうやってお互いの人生(つぶ)しあって、ナンか残るの? ・・・カンベンしてよ』


あの時。遊佐が冷たく言い放った言葉を、あたしは一生わすれられない。・・・ううん、忘れちゃいけない。

あたし達の結婚は、傷の舐め合いじゃダメなんだって。

家を出て一人暮らしを始めて、少しずつ。・・・少しずつ。榊に掬ってもらいながら、おばあちゃんや哲っちゃん達に助けられながら。足許を踏み固めてきたね。

それでも。
時限爆弾を抱えた脚じゃもう守ってやれないって。笑ってあたしを仁兄に譲ろうとした。
死ぬほど愛してるから結婚できないって。ユキちゃんの前で泣きながら、あんたは諦めようとした。


ねぇ遊佐。
あんたほど、あたしを愛し抜いてくれる男なんてこの世にいない。
自分を捨てても。あたしのシアワセしか考えない男なんて、ほかに誰もいない。

臼井宮子に生まれてよかった。
遊佐真に出会えてよかった。

何ひとつ後悔させないくらい、あんたとシアワセになるって約束する。
あたしを諦めないでよかったって、言わせるから絶対・・・っ。


「・・・あんたは笑っててよ、死ぬまであたしのそばで。それだけでいいんだから、あたしは・・・」

すすり上げた鼻声で。

遊佐があやすみたいにずっと頭を撫でてる。
掌の温もりがあったかくて、胸がいっぱいになる。こみ上げる。あふれる。


「愛してる、・・・(まこと)



封印してた名前を素直に(ほど)いて。哲っちゃんちに着くまでずっと、愛しい男の腕の中で甘やかされ続けてた・・・・・・。