紫紺と純白のグラデーションに、金色に縁どられた、赤や桃、藤色の牡丹や桜が艶やかに咲き誇る中振袖を着付けてもらい、つまみ細工のシックな花の髪飾りを耳の上あたりに。
今はお正月と大事な時くらいしか着ないけど。やっぱり背筋が伸びて気持ちが引き締まる、なんだか。

おばあちゃんとママは黒留袖。おじいちゃんとお父さんが黒の紋付袴で、哲っちゃんや遊佐はスーツ。
カラオケ用のマイクを使って、一ツ橋組総代のおじいちゃんが新年の口上を切り。本家組長のお父さんが杯を手に乾杯の音頭を取ると、お座敷にずらりと並んだカラスの集団から『明けましておめでとうございます!!』って、(とき)の声が一斉に上がる。とても、『らしい』一年の始まり。





「宮子お嬢、ますますベッピンになったんじゃねぇのかい」

「ずいぶん目が良くなっちゃいました?、橋本のおじさま」

「あと十も若けりゃ、俺がお嬢を貰うのによぉ!」

歳の問題じゃないからね?!
お腹の中であっかんべーをしながら、笑って適当にいなす。

座卓を挟んで向かい合ってる主要幹部の上位20人くらいまでを、瑤子ママとあたしが片側ずつに別れて上座から順に挨拶に回るのも、ちょっとしたご愛嬌で。

見知った顔ぶれだから気負いもないし、社交辞令を織り交ぜて談笑がひと段落したら次へ。

「明けましておめでとうございます。宮子お嬢さん」

相澤(あいざわ)さん!」

誰が見ても丸わかりなくらい、はにかみ顔で薔薇色オーラ全開なあたし。
こっち側の列にしといて、よかったぁっっ。おみくじで大吉を引いた気分。今年は絶対イイことあるったら!