紗江からかかってきた時、ちょうどキッチンで明日の朝ご飯を考えてたあたし。年明けまで哲っちゃんちで過ごす間は、なにかと夜が遅いママをせめてゆっくりさせてあげたくて。

手渡されたスマホをもう一度耳に当てると、遊佐の背中を目で追いながら紗江に呼びかけた。

「ごめん紗江! そろそろ哲っちゃんも帰ってきそうだから、あとでラインするねっ?」

『うん分かった。遊佐クンとも話せて嬉しかったわ! またねオヤスミ』

「言っとく。おやすみー!」

ちょっと忙しなく通話を切りリビングへ。
長ソファの背もたれに寄っかかって、気怠そうに遊佐は体を投げ出してた。

「冷たい水飲む?」

28日の今日はいわゆる“仕事納め”っていうヤツで。事務所に詰めてる全員で夕方から飲んでたハズ。6時始まりだったとして約5時間。・・・本気であんたの肝臓が心配になってきたわ。内心で溜息。

「んー・・・のませて-」

酔った時の甘えモード。お店のオネエサン相手にやったらコロスからね?

ウォーターサーバーのミネラルウォーターをグラスに注いで戻り、隣りに座ると。コクっと自分の口に含んで遊佐に顔を寄せた。やんわり唇を押し当て『開けて』の合図。合わさったまま開いた隙間から少しずつ水を移してく。
3回繰り返したとこで後ろ頭を捕まえられて、甘いキスに変わる。啄んでは離れ、角度を操られながら食べられる。

「・・・ンッ・・・」

遊佐の体から香るお酒の匂いに酔わされてるのか、どっちなのか。頭の芯がハチミツ色に溶かされそうになっているところへ。

「そのくらいにしときなさいよ・・・宮子お嬢」

哲っちゃんの含み笑いが背中から聴こえたもんだから。思いっきり狼狽え、慌てて遊佐を押し返す。