なんか言いたげに仏頂面であたしを上から睨んでる男が目の前に浮かんで。
正座をくずして背もたれに寄りかかり、白い天井を仰ぐ。

「人生丸ごともらっちゃうのに、それで足りるかなぁ・・・」

『それだけで十分、生きる意味にも価値にもなるじゃない。榊クンならお釣りが来るって言うわよ。自分のためだけに生きて満足して死ぬのと、自分より大事な誰かのために生きて死ぬのと、どっちが幸せかなんて本人しか分かんないでしょ』

背中を勢いよく叩かれて、つっかえてたモノが喉から飛び出したみたいに。途端、気持ちからふっと何かが抜け、一人でに笑いが漏れた。

「・・・ここんとこ頼りっきりになってんのに榊は文句一つ言わないし、ほんとはどうなのかなって考えちゃったんだよねぇ。でもありがと、紗江に言われて吹っ切れたわ」

『そ? なら良かったけど』

「んっ。榊にもプロポーズしてみる」

『はいっ?! 宮子ッ? プロポーズってちょっと?!』

耳許に響く紗江の仰天っぷりにあたしは声を立てて笑った。

『エ?、何よ?! ちゃんと説明しなさいよ~~っっ』





ねぇ榊。
あんたの人生、あたしと真がもらう代わりに。
何をあげられるかは分かんない。

でもこれだけは約束する。

もしか。あんたがあたしの為に死ぬときは。
自分を責めて謝ったりしない。
あんたが貫いた生き様を悲しんだりしない。

お疲れさま、ありがとうって(おく)るから。
ダイスキだよ、またねって笑うから。


生まれ変わっても。友達でいてよね。