たとえ君が・・・

ずっとこの子がお腹にいてくれたら生き続けることができるのにと、高水の妻は夫に泣き叫んだことがある。できれば出産はしたくなかった。出産した瞬間がこの子の命の終わるときなのだと知っていたからだ。無脳症の胎児の状態も様々だが、自分たちの子供は一年近く生きる奇跡を起こせるような状態ではないことはもう二人はわかっていた。

それでも出産することを決心したのは、夫の言葉だった。

『この子に、この世界を見せてあげよう。お腹の中の暗くて狭い場所だけで、この子の人生を終わらせるなんてかわいそうすぎるだろ?生まれたらこの世界のまぶしさや、きらめきを見せてあげられる。俺と、お前で抱っこしてあげることもできる・・・だから、産もう。』

夫の言葉はお腹の子供のためだけではないことが妻にはわかっている。いつまでも自分のお腹の中にいることで、妻自身の体にも負担が増す。そんな現実を考えた夫の言葉に妻は頷くしかなかった。