たとえ君が・・・

「・・・はい・・・」
夫はそれ以上言葉にできなくて短く返事をした後に、視線をそらした。
妻はこらえきれず涙を流してから自分のお腹をさすった。
「この病院に出あえてよかった・・・。本当によかったね・・・。」
とお腹の子供に語りかける。そして、妻は涙の後の残る顔をあげて渉を見た。
「前に、瀬戸さんにはお願いしたんですが、先生にもお願いしてもいいですか?」
「なんですか?」
渉はちらりと多香子を見た後に妻の方を見た。
「この子が生まれたら、おめでとうございますって言ってくれますか?」
「・・・?」
「この子が生きられないかもしれないことは十分にわかっています。現実も受け入れたくないけど、受け入れているつもりです。でも、妊娠した時にはたくさん祝福されたこの子が、産まれるときは誰からも祝福されないなんてかわいそうすぎる。・・・だから、せめて先生と看護師さんにだけでも祝福してほしいんです。」
妻の言葉に高水の夫も渉の方を見た。
「命を授かることの奇跡を私たちはいつも感じています。お二人のもとに命を授かった奇跡を、そしてやっと会えることを、一緒にお祝いさせてください。」
「ありがとうございます。」
夫婦は深々と頭を下げた。