たとえ君が・・・

「何か足りないものや、明日の分娩に関して質問があれば遠慮なくお呼びくださいね。」
多香子は勤務時間をとっくに過ぎていても、まだ高水夫婦のそばにいた。
患者の夫もしばらく一緒に泊まる。簡易ベッドを出し終えると多香子は病室を出た。

「お疲れ」
「お疲れ様です。」
多香子が廊下へ出るとそこには白衣のポケットに手を入れた渉が立っていた。

お互い言葉はなくても、お互いになんとも言えない気持ちを抱いている。

一番つらいのは患者たち夫婦だ。
でも、寄り添う側には覚悟もいる。

「飯、食いに行かないか?」
渉の言葉に多香子は少し間をおいてから頷いた。