たとえ君が・・・

「・・・瀬戸さん・・・ですか?」
妻が多香子のネームプレートを見て声をかける。
「はい。」
「お願いがあるんです。」
「なんですか?」
「この子が生まれたら、おめでとうございますって言ってくれますか?」
「・・・」
死産の可能性も高い患者にはお祝いの言葉は言わない。
多香子が言葉の意味を考えていると妻は泣きながら夫の手を握り、すがるような目で多香子を見た。
「この子ができたとわかった時、島中の人が本当に喜んでくれたんです。でも、きっともうこの子が産まれても誰も祝福してくれない。そんなの・・・この子がかわいそうすぎる・・・。だから、私たち夫婦だけでも、この子が生まれたらありがとうって言いたいんです。祝福したいんです。」
「わかりました。約束します。」
多香子は患者の目を真剣に見つめながら返事をした。

計画分娩は翌日の昼から始めることになった。