たとえ君が・・・

「私たち、二人とも生まれ故郷の島に出戻り組なんです。」
いざ患者が目の前に来ると渉は外来の受付人数を調整して、患者の話をじっくりと聞けるようにした。
「出戻り組?」
「はい。一度は本土に出て一人暮らししていたんですけど、どうしても都会の空気も水も肌に合わなくて。地元へ戻ったんです。それで、小さいことから一緒に育った夫と再会して結婚しました。」
「そうでしたか。」
渉は穏やかな口調で話を聞いていく。多香子もその隣で話を丁寧に聞いていた。
「島中の人が結婚も、今回の妊娠も喜んでくれて。お祭り騒ぎだったんです。」
奥さんが涙を流し始めると、隣に寄り添う患者の夫がその肩を抱いた。
「せっかく授かった命。つい最近まではこんなことになってるなんて知らなくて・・・」
「・・・」
医療の進んだ場所なら、この二人はもっと早く現実に向き合えていたはずだ。
「奥さんの体を考えると、一刻も早く出産したほうがいいと思います。」
渉が本題を切り出した。
「・・・」
患者本人は涙に詰まって話ができない。
患者の夫が涙をぐっとこらえた表情をしながら「お願いします」と告げた。