たとえ君が・・・

「無脳症?」
「あぁ。」
外来担当の日。渉は多香子に患者の話をしていた。
「小さな島に住んでいて、妊娠25週までは近所の助産師が診ていたらしい。でも、異常を感じた助産師が本土の病院をすすめて、受診した時にはすでに30週近かった。即入院して3日後にあたる今日、うちの病院に転院してくる。」
過疎化の進んだ地域や、産婦人科がない地方からの転院患者は意外と少なくはない。
「患者の気持ちの状態をみてからだけど、そう長くはもう待てない。できれば今週中にでも出産しないと、どんどん母体への影響も大きくなる。」
無脳症の子供は本来出産を迎える前に堕胎することが多い。
脳の無い赤ちゃんは無事に出産できたとしても出産後すぐに亡くなってしまうケースがほとんどだ。
「今回の胎児は脳の大半がない。頭蓋骨も無形性、あるいは欠損してる。」
渉の言葉に多香子は出産後すぐに亡くなることに予測がついた。
「辛いケースだけど、大丈夫か?」
渉の言葉に多香子は「はい」と冷静に返事をした。