たとえ君が・・・

「俺が出る」
渉がそう言って電話に出る。多香子は点滴を繋げようとした。
「待った。」
渉の声に多香子が手を止める。
患者も目を開けた。

「ご主人が病院にいらしています。面会されますか?」
渉の言葉に患者は多香子を見た。
「・・・」
患者は少し悩んでから
「お願いします。」
と答えた。

多香子は針を刺したところにテープを張り、患者が体を起こすのを手伝った。
そして、何も言わずに患者の手に再びエコー写真を渡した。

言葉にはしなくても多香子の願いだった。