たとえ君が・・・

「ふざけないでください。」
多香子は笑顔を浮かべないまま渉に告げると自分に渉がかけてくれた上着を渉の手に返した。
「ありがとうございました。休憩もほどほどに。」
多香子はそう言って屋上を後にした。

渉は一人、屋上で空を見上げる。

慶輔・・・

もう、いいだろ?
いつまで多香子を縛り付けておく気なんだよ・・・。
もう多香子は十分慶輔を想った・・・
悲しみに縛り付けておくのはお前の本心じゃないだろ・・・

そんなことを空に語り掛けてもなにも答えない。

ただ青い空に、渉は大きなため息をついた。