たとえ君が・・・

片づけが終わると多香子は病棟へ戻った。
夜勤のスタッフが涌井の使用していた部屋を片付けている。

泣きながら片づけをしている後輩は「こんな顔じゃご家族に会えません・・・」と多香子に患者の荷物を預けた。

まだまだ、やらなくてはならないことがたくさんある。

半地下にある霊安室に多香子は向かった。
廊下で頭を抱えている患者の夫に多香子は深々と頭を下げる。
「ありがとうございました。」
涙を流しながら患者の夫は多香子の手にしていた入院用の荷物を預かる。
「しばらくお待ちください。」
多香子はそう告げて霊安室に入ると、すでに涌井の体はきれいにされていた。
涌井の眠るベッドの横には小さな小さな新生児用のベッドに死産だった赤ちゃんが全身を白い布にくるまれて安置されていた。

「涌井さん。赤ちゃん抱っこしますか?」
多香子はそう言って赤ちゃんの遺体を涌井の胸に抱かせた。