たとえ君が・・・

「多香子。」
「ん?」
渉は携帯で緊急の呼び出しがあり、多香子の部屋から救急搬送される患者の元へ向かうことになった。
多香子をベッドに寝かせると渉は白衣のポケットから一通の手紙を出すと多香子に渡した。

多香子が渉から手紙をもらうのははじめてだった。

手紙を読み始めようとすると渉は「行ってきます」と病室を出て行ってしまった。

多香子は渉の背中を見送ってから少し体を起こして手紙を見た。

『多香子へ』という文字を指でなぞる。渉の文字だ。



愛おしさを感じながらそっと自分のお腹に触れた。
パパからの手紙だよ。
初めて・・・。こんなのきっと苦手なはずなのに・・・
その思いだけで涙が出そうになるのをこらえて多香子は読み始めた。