たとえ君が・・・

「多香子と慶輔の子供を守れなかったのは俺だ。」
「・・・違う。」
多香子は理恵から前に自分が流産した時に渉も悲しんでいたこと。自分を責めていたことを聞いていた。でも直接話を聞くのは初めてだった。

「この仕事して、何千人もの命を救ってきた。誕生に立ち会ってきた。なのに、一番大切な守りたいと願った命を守り切れなかった・・・。」
「・・・違う・・・」
涙につまり言葉がうまく出せない分多香子は首を左右に振った。
違う。渉のせいじゃない。そんなこと一度も思ったことない。
「多香子をこんなに苦しめたのも、今も苦しめているのも俺だ。」
「違う!」
多香子は声を大きくして渉の体から自分の体をはなそうとした。
でも渉の抱きしめる力が強くて体を離すことができない。
「慶輔の最後の希望まで・・・俺は守れなかったんだ・・・。」
ずっとずっと渉の心にあった気持ち。

あまりにも切なくて・・・苦しくて・・・多香子の瞳から次々に新しい涙があふれた。