多香子は慶輔が亡くなった後も慶輔の苗字である瀬戸のままだ。
自分と結婚することになればその苗字も変わる。

慶輔の両親は多香子にとって第二の家族も同然だと渉は知っていた。

「新年早々お邪魔して申し訳ありません。」
慶輔の遺影のある和室で多香子と渉、慶輔の両親は向かい合い座っていた。
渉が慶輔の両親に話を切り出す。

「かなり前にお邪魔させていただいた橘渉と申します。」
「慶輔の同期の方よね?慶輔からいつも話は聞いていました。入院中もお見舞いに来ていただいたり、お葬式にも来ていただいてありがとうございました。」
慶輔の両親が頭を下げる。
「いえ、生前は慶輔さんにかなり支えてもらっていました。大切な親友です。一緒に切磋琢磨したり、時々馬鹿をしたり、本当に大切な大切な存在でした。」
「そうでしたか。ありがとうございます。」
穏やかな表情で慶輔の両親は二人を見ている。
「お義父さん、お義母さん。」
多香子が今度は話を切り出す。
渉が多香子を見ると、多香子は自分から報告したいというように渉を見た。
多香子の気持ちを知った渉は多香子が話す言葉に耳を傾けた。